上部ボタンが表示されていない場合はここをクリック


 私は、大学卒業後まもなく海外での心臓外科トレーニングを目指して西ドイツ、デュッセルドルフに渡航し、それ以来30年という長い年月をドイツで過ごしてきました。日本では全国に500以上の心臓外科施設が乱立し、そのために1施設あたりの年間手術数が80例にも及ばない現実の中で、いまだに研修内容や医療経済面で大きな不合理が生じています。それに比べ、1施設あたり心臓手術が年間1,400例という合理的な医療制度の完備したドイツで研修を受け、その場で臨床医療を実践することができたのは幸いでした。
 年間手術数6,000例という世界一の大規模な心臓病センターをドイツ、バードユーンハウゼン(http://www.hdz-nrw.de/en/home)で立ち上げ、開設当初の1984年より20年間、同センター(大学病院)の副所長、教授として数多くの患者さんの外科治療にあたってきました。その内訳は、先天性疾患、成人病疾患(バイパス術、弁手術、大動脈手術など)そしてとりわけ重症心不全に対する人工心臓の植え込みや心臓移植です。その間、日本から渡航された心臓移植患者は10名を超えています。その他、日本の多数の施設から医師、看護師、臨床技師も積極的に受け入れ、臨床実習の場を提供してきました。今までに15名ほどの心臓外科医が立派に育ち、日本に帰国後も全国のいろいろな施設でリーダー的立場となって頑張っています。
 私は2005年7月より日本に帰国し、日本大学医学部附属板橋病院の心臓血管外科教授として迎えられました。ここでは先天性疾患、バイパス手術、弁置換/形成術、大動脈瘤/解離といった日常的な心臓手術のほかに、重症の心不全に陥った患者さんの外科手術も行ってきました。臓器移植法の不備や臓器提供者(ドナー)の不足により、心臓移植が欧米やアジア先進国に比べ進展しないわが国においては、その代用となる治療方法(心臓縮小術、両心ペースメーカー、人工心臓)も積極的に取り入れた心臓外科領域のすべてをカバーするチームを育て上げました。








北関東循環器病院(CCJ)
http://www.ccj.or.jp

 このたび平成22年4月1日より、北関東循環器病院(http://www.ccj.or.jp)の院長を仰せつかりました。市川秀一 理事長・前院長が20年前に群馬県渋川市に循環器病に特化した施設を作られ、多くの方々の治療にあたってこられました。そこで私が此の大役の継承をお引き受けすることに責任の重大さと、また同時に大いなる誇りを感じています。
 医療が年々高度化する中で、我が国には「高騰する医療費」、「医師不足」、「地域医療の崩壊」などといったキャッチフレーズで表現されるように多くの問題が一気に噴出してきた感があります。一人でも多くの国民に、そして都市・地方にかかわりなく良質の医療が提供されるために、今日本の医療は多くの点で変革を必要としています。
 高価な医療機器を備え、無駄な検査や薬を患者さんに強いることがあっては”限りある医療財源(国民の税金と保険金からなる)”は底をつき、医療を受けられる者と受けられない者との格差が生じることは目に見えています。大学病院の医局を中心とした医師派遣制度の限界は明白にあらわれ、勤務医が減り開業医が増えるという医師偏在が顕著になってきています。仮に一般的な医療が疎かにされ専門的医療のみに重点が置かれることがあってはよい医療が国民に提供されているとは言えないでしょう。
 地域には都市では行えない住民に密着した医療があるはずです。そこには近隣の病院、診療所との連携が不可欠だと思います。此の北関東循環器病院で次世代の心臓外科医の育成に少しでも貢献出来れば幸いです。

南 和友
北関東循環器病院 病院長
ドイツ・ボッフム大学 胸部・心臓・血管外科 永代教授
(C) 2015 CopyRights All Rights Reserved. Kazutomo Minami